MRONJは無自覚に発症することもあるため、この項では医療従事者向けに潜在性・非骨露出型病変(ステージ0*)を解説します。
*ステージ0はMRONJの診断基準を満たさないことや過剰診断への懸念から採用されない機関もありますが、50%がステージ1に移行することが報告されており、本冊子では前駆症状として記載します。
ステージ0
臨床的に骨壊死の確証はないが、
以下のような非特異的な症状または臨床所見を呈する患者。
症状
- 歯が原因と説明出来ない歯または周囲の痛み
- 顎の鈍い骨痛、顎関節部まで放散する痛み
- 副鼻腔の疼痛、上顎洞壁の炎症、粘膜の肥厚
- 神経感覚機能の変化
臨床所見
- 歯の動揺
- 口腔内あるいは口腔外の腫脹
X線画像所見
- 慢性歯周病に起因しない歯槽骨の喪失または吸収
- 抜歯後の新生骨の喪失
- 顎骨/周囲骨の骨硬化像
- 歯根膜の肥厚、不明瞭化
右下第一大臼歯舌側に骨露出を伴わない潰瘍を認めます。
歯科用CTでは同部の歯槽骨の一部喪失(矢印)が確認されます
ステージ0
のMRONJを疑った時には…
ステージ0相当の病変には①可逆性の骨髄炎で保存的治療で治癒するもの②根尖病変に見えるがすでに骨髄炎、骨壊死が存在するものが混在し得ます。
ステージ0の所見や症状を発見した際には患者さんへの十分な説明の上、処方医への情報共有や画像検査や組織検査が行える医療機関との病診連携が必要と考えます。
回答者
横浜市立大学附属病院 歯科・口腔外科・矯正歯科
※本ページは、令和6年3月作成時のMRONJ冊子の内容を基に作成しています。
掲載している所属・肩書等は作成時点の情報であり、現在と異なる場合があります。
顎骨壊死検討委員会
ポジションペーパー2023について
今回改訂されたポジションペーパーの内容について、一部の媒体では「抜歯時のリスク薬剤の休薬は不要」とセンセーショナルに紹介されていますが、「休薬せずに抜歯を行ってもMRONJが発症しない」ことと同義ではありません。
今回のポジションペーパーが抜歯時に休薬しないことを提案するに至った根拠として本文に記載されている内容の要約を紹介します。
- 抜歯などの歯槽骨に対する手術の際の休薬の是否について質の高いエビデンスは得られていない
- 抜歯に際しての休薬の利益(MRONJ発症率の低下)を示唆する結果は得られていない
- 抜歯に際しての短期間(術前2か月程度~後)の休薬の害は低用量のデノスマブ投与中においては骨折が増加する可能性が示唆されたが、BP製剤や高用量デノスマブの投与については不明
- 休薬のために抜歯が延期されることによる歯性・顎骨感染の進行の懸念がある
- 休薬が長期に及んだ場合は骨粗鬆症関連骨折のリスクが上昇する
歯科医療従事者、処方医ともポジションペーパーの本文をご一読の上、患者さんへの十分な説明や処置時の適切な対応が行えるように理解を深めていただくことをお勧めします。特に「ステージ0」の概念で紹介したとおり、通常の歯周炎や根尖病変に見えていても不顕性の顎骨壊死や骨髄炎をきたしているケースが混在しています。よって、リスク薬剤投与歴のある患者さんに抜歯適応と判断した際にはリスク薬剤の休薬の是否だけでなく、不顕性の骨髄炎・顎骨壊死が存在している可能性や、処置時の創部の処理にも注意するべきです。また、併存疾患や常用薬による全身的なリスクの把握も必要です。さらに本書Q8で解説したとおり、「抜歯を必要としない」ことを目標とした長期的な口腔管理が望ましいことは言うまではありません。そのためにも処方医と歯科医師とでの連携、情報共有は不可欠と言えます。
▼薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023







